原田マハさんの作品で好きな「リーチ先生」という本があります。
イギリス人陶芸家のバーナード・リーチが同士達とともに民藝の発展に情熱を注ぎ、東洋と西洋をまたいだ友情を描いたアート小説ですが、そのリーチ先生が訪れたのが大分県の小鹿田(おんた)でした。
最初は読み方もわからず(こ、こじかだ…?と読んでました)、焼き物の種類としても知らなかったのですが、今回タイミングよく小鹿田焼の里を訪問することができました。
とても素敵な場所で、ますます「民陶」(庶民によって作られ、生活のために使う陶器)というものに深く愛着を感じるきっかけになりました。
小鹿田焼の里とは
大分県日田市の自然豊かな山間で息づく小鹿田焼は、一子相伝で、300年以上にわたって伝統の技法を守り続けています。
つまりその技術は我が子ひとりだけに伝えられ、決して弟子を取ったり外部から人を連れてきたりしないんですね。
そんな非効率な…と思ってしまいましたが、伝統技法を確かに継承していくことが重要無形文化財に指定された理由のひとつでもあるのです。
また作品に個人銘を入れることもありません。9軒すべての窯元が文字通り一体となり、伝統技法を守って「日用の美」を追求しているため、個人作家は生まれないんだそうです。
現在、小鹿田焼の窯元は9軒のみです。1705年ごろの開窯以来変わらず、黒木家・柳瀬家・坂本家の三家体制で作陶されています。
実際にマップを見ても皆さん名字が同じですね。
また集落のどこにいても、木製の唐臼がししおどしの原理でギッタン…とゆっくり鳴いている音が聞こえます。
一日中動く唐臼。
そして川のせせらぎ。
何百年も変わらない風景なんだなぁ、と思いを馳せずにはいられません。
小鹿田焼を購入したい!
窯元さんの直売所
9軒の窯元さんは作業所のすぐそばに作品を並べた直売所を構えています。
品揃えも豊富で見ているだけで楽しいですし、窯元さんによっては傷や歪み品は割安で販売しており、つい沢山購入したくなってしまいます。(私はなんとか4枚で留めました…)
鹿鳴庵ギャラリー
小鹿田焼の里から車で5分ちょっと走るとセレクトショップ「鹿鳴庵」があります。
こちらでもすべての窯元さんの作品を扱われている他、直売所では見かけなかったようなデザインなども見ることができます。
行けない方はネットショップで
本来であれば現地を訪れて実際に手に取って選びたいものですが、大分県の山奥なので気軽には行きにくいかもしれません。
ありがたいことに、街中のセレクトショップやネットでも小鹿田の焼物は購入できます。主な技法別にまとめてみましたので参考にしてみてください。
飛び鉋 (とびかんな)
型作りした器に、ろくろを回しながらL字型鉋をあて表面を削り模様をつける。
刷毛目(はけめ)
ろくろを回しながら、化粧土をつけた刷毛を小刻みに打ちつけて模様をつける。
流し掛け、打掛け
スポイトなどに化粧土や釉薬を入れ、それを一定の高さから垂れ流すようにかけて模様をつける。(昔はスポイトではなく竹筒に釉薬を入れていたそう)
窯元訪問前に、小鹿田焼陶芸館もおすすめ
小鹿田焼の里の入り口には市立小鹿田焼陶芸館があります。
こちらでは無料で小鹿田焼の歴史や作陶の仕方を学ぶことができ、リーチ先生ことバーナード・リーチの作品も鑑賞することができます。
上述したように小鹿田焼は伝統的な技法がしっかりと守り受け継がれ、またオートメーション化することなくすべてを手作業で行っています。これらを陶芸館で学んでから、実際に窯元を訪れて作業場や作品を目にすると感じ方も大きく違うのではないかなと思います。(まっしぐらに窯元さんに行ってしまった私のプチ後悔ポイントです。。)
小鹿田焼の里へのアクセス
山中に所在しているので車で行くのがおすすめです。
JR日田駅からバスも出ていますが、1日に3本と本数はかなり限られていますのでお気をつけて。
時間があればぜひ事前に「リーチ先生」も
本のことは詳しくは紹介しませんでしたが、日本の文化や芸術に少しでも興味のある方はきっと好きなはず!ぜひ読むことをおすすめします。
流石は原田マハさんなので史実とフィクションを織り交ぜながら読みやすくも熱量高く、リーチ先生や民藝運動に尽力した日本人たちの熱い友情に感動します。
しかもリーチ先生に師事する「亀ちゃん」のモデルとなった方の子孫も作陶されており、上述した鹿鳴庵で購入もできます。実際に訪れることで最高の読書体験が完成しますよ!
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